ロシア人の名前講座




ロシア人の名前の構造について

基礎的なことですが、ロシア人の名前の構造について。
ロシア人には、父称というものがあります。
実の父親の名前をやや変化させたもので、
これは決してミドルネームでもなければ、姓の代わりに使うものでもありません。


セルゲイアンドレーヴィッチイヴァノフ
СергейАндреевичИванов
(名)(父称)(姓)

この場合、セルゲイの父親はアンドレイ=イヴァノフなんだなと、
推測がつくのです。



相性と敬称

ロシア語にはmisterだの、ムシューだのにあたる言葉はありません。
代わりに、名前と父称を続けていえば、それが敬称になります。
「セルゲイ=アンドレーヴィッチ」と呼びかければ、
セルゲイさん,という言い方になるのです。
それから、くだけた呼び方として、愛称があります。
セルゲイだったら、「セリョージャ」というのが一般的です。
愛称は、単にもとの名前を短くするものばかりではなく、
もとの名前がわからなくなってしまうパターンもあります。
そこが、外国人にとっては混乱してしまうところです。
たとえば、ニコライがコーリャになったり、
アレクサンドルがシューラになったり、です。



名前から作られた姓

現在ロシアの外相そして国防省がイヴァノフさんという人です。
この姓が、イヴァンという男性の名前から作られていることはご存知でしょうか?
ロシアでは、男性の名前から作った姓が多いです。
ミハルコフとか、セルゲーエフとか。
これはなぜかといいますと、
ロシアでは名前の種類が少なく、同じ名前の人が多いのです。
そこで同名者を区別するために、
新たに名前から姓を作って使うようになったのです。



名前で男女の区別が分かる

ロシア人はその名前ですぐに男女がわかります。
名前の最後の子音が、−aか−yaで終わっていれば、大体が女性です。
例えば、アレクサンドルだったら男、アレクサンドラだったら女です。
同様な例として、アントンだったら男、アントニーナだったら女です。
これは姓についてもいえます。
イワノフなら男、イワノワだったら女です。
だから、同姓の夫婦でも、姓の形が少し異なるということになります。
これは両親を同じくする兄妹、姉弟でも同じです。



自己紹介

日本では、自己紹介のときに姓と名前、あるいは姓だけを名乗りますね。
名前だけしか名乗らない人は、どこか後ろ暗いところがあるのではないかと
思われてしまいます。
そういうわけで、名前しか名乗らない人とは親しくしづらいです。
一方、ロシアでは名前だけ、あるいは名前と姓を名乗ります。
姓だけ名乗る場合は、あまり親しくするつもりはないということになります。
この点、日本とは大きく異なります。
それから、ロシアでは、「アリョーシャです」というように、
愛称だけを名乗ることもしばしばです。
つまり、自分の本名はアレクセイなんだけど、
親しみをこめてアリョーシャと呼んでくれ、、というつもりなのです。
日本では、「こいずみじゅんいちろうです。じゅんちゃんと呼んでね。」
などとは言いませんから、
この点は、習慣が全く違うのだと言っていいでしょう。



名前は保守的・伝統的

日本では新しい名前を作って命名することがよく行われていますし、
名前には流行があります。
また、親が作った名前で、全国で一人しかいない名前というのもあります。
ロシアでは、名前のパターンは決まっており、だからこそ同名も多いです。
ロシアをはじめとしたヨーロッパ諸国では、
キリスト教の聖人にちなんだ名前をつけます。
たとえば、エリザベス(英)、イザベラ(西)、
エリーザベト(独)、エリザヴェータ(露)というように、です。
これが合衆国なんかだと、聖人にちなんだ名前をくだけさせて使ったり、
新しい名前を考えたりしているようですが、
ロシアでは、伝統的な名前を守り抜いてきました。
20世紀初頭は、あたらに作った名前もはやったそうですが、
現代では、新たに作った名前は奇異に感じるそうです。
このように名前の種類に関しては保守的ですが、
その分、愛称のレパートリーを増やして補っているようです。



夫婦別姓

ロシアは夫婦別姓が認められています。
夫婦別姓って、先進国では珍しくないですよね。
もちろん、ロシアでも夫婦同姓にしてもかまいません。
つまり、選択の余地が与えられているのです。
あと、旧姓と夫の姓をつなげて名乗ることもできるそうです。




父称

さて、いかにも東欧らしい習慣、「父称」について。
父称は基本的には実の父親の名前から作るのですが、
非嫡出子などの場合は、養父や後見人にちなんだ父称をつけることが多いです。
それに、父称は気に入らなければ、
(姓や名前も含めて)自由に変えることができるので、
父親(あるいはそれに準じる男性)の名前にこだわる必要はなく、
単なる慣習として存在している模様です。
それに、ロシア国内においても、ロシア人を父親に持たない人の場合は、
父称を名乗らずに暮らしています。
ところで、この父称、東欧ならどこにでもあるというわけではなく
、 ロシア以外ではベラルーシ、アルメニアにはありますが、
ブルガリア、ポーランドにはないそうです。



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